故人の生前を知っているからこそ

最期まで患者のセルフケアを助けることが看護の役割である。

看護師が行うエンゼルケアの基本的な考え方

看護師がエンゼルケアを行う上で重要なのは、もし本人だったらどう保清するかという視点を持つことだ。

看護とは、患者のセルフケアを助けることが基本的な役割だ。
そのため、死後といっても本人がするであろうことに沿ってエンゼルケアを行う必要がある。
例えば簡易シャンプー後の髪形だが、病院内での姿を再現するのではなく、分け目や前髪の下ろし方、整髪料で整えていた方法などを家族から聞き取り、本人の本来の姿に近い方法で整えることが望ましい。
血色を保つエンゼルメイクの場合も、家族が知る普段の顔色にできる限り寄せることが大切だ。
決して看護師の思い込みや決めつけで行ってはならない。
また、保清は死後硬直が始まる3時間~6時間内に終わらせることも重要だ。

エンゼルケアのもう一つの目的は、腐敗、便もれ、においへの対処である。
この処置を適切に行わないと、病院を出た後の家族に死の事実とは違う精神的ダメージを与えることになる。
30度~40度で細菌類の活動が活発になるので、腐敗を遅らせるために処置が終わり次第速やかに冷却をする。服をきつく着せてしまうと、腹腔内の腐敗液が漏れだす可能性があるのでゆったりと着せる。
遺体を横向きにすると便漏れが起きやすいので、家族と協力して抱きかかえるなどの配慮が必要だ。

このように、家族も参加してエンゼルケアを行うことで、死の受け入れの促しにもなる。本人の生前の姿を家族と共有し、本人に成り代わって病院を出る準備をすることが、エンゼルケアである。

病院で行うエンゼンルケアの他に自宅で行うエンゼルケアもあるが、そちらに関してはこちらのサイト〔http://angelcare-guide.com〕を推奨する。